はじめに
こんにちは!今回は、2026年(令和8年)第38回整形外科専門医試験の問31〜40を解説します。
この10問では、四肢循環障害、小児整形外科、骨系統疾患、骨代謝、骨腫瘍など、分野をまたいだ知識が問われました。単に正答を覚えるだけでなく、「誤りの選択肢をどう修正すれば正しくなるか」まで確認していきましょう。
※本稿は試験対策を目的とした学習用資料です。実際の診療では、最新の診療ガイドラインや各施設の方針に従ってください。
2026年 整形外科専門医試験 過去問解説(問31〜40)
問31:四肢循環障害
テーマ: Buerger病、コンパートメント症候群、脂肪塞栓症、閉塞性動脈硬化症、術後静脈血栓塞栓症の基本事項を横断的に確認する問題です。発症しやすい患者像と病態、発症時期を整理しましょう。
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正答:c、d
- a(誤):閉塞性血栓血管炎(Buerger病)は、喫煙歴のある男性に多い疾患です。
- b(誤):コンパートメント症候群は、筋膜区画内の圧(コンパートメント内圧)が上昇し、組織灌流が障害される病態です。「血管内圧」の亢進ではありません。
- c(正):脂肪塞栓症候群は、長管骨骨折などの受傷直後ではなく、12〜24時間の潜伏期間の後に発症します。したがって、受傷後6時間以内の発症は稀です。電撃型と呼ばれ急速な転帰となります。
- d(正):閉塞性動脈硬化症(ASO)などの末梢動脈疾患は下肢に多く、上肢動脈に症候性病変を生じることは比較的稀です。
- e(誤):人工肩関節置換術後の静脈血栓塞栓症(VTE)発症率は、人工股関節全置換術後より低いです。
問32:骨端症と好発年齢
テーマ: 骨端症を、発生部位と好発年齢のセットで覚えているかを問う問題です。Panner病と上腕骨小頭離断性骨軟骨炎、Köhler病とFreiberg病を混同しないことがポイントです。
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正答:b、c(誤っている組合せ)
- a(正しい組合せ):Köhler(ケーラー)病は足舟状骨の骨端症で、主に就学前の小児に発症し、5〜6歳は妥当です。
- b(誤った組合せ):Panner(パンナー)病は肘の上腕骨小頭全体に生じる骨端症で、多くは10歳未満男児の利き手に発症します。12〜15歳では、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎との鑑別が重要になります。1年程度の保存加療で改善します。
- c(誤った組合せ):Freiberg(フライバーグ)病は中足骨頭、特に第2中足骨頭に生じる骨壊死・骨端症で、思春期(12〜18歳頃)の女性に好発します。4〜7歳は典型的ではありません。
- d(正しい組合せ):Kienböck(キーンベック)病は月状骨の無腐性壊死で、20〜40歳の成人に好発します。
- e(正しい組合せ):Legg-Calvé-Perthes(ペルテス)病は小児大腿骨頭の無腐性壊死で、4〜10歳ごろ、特に5〜7歳前後を中心に好発します。
試験対策としては、「Köhler病は幼児」「Freiberg病は思春期」と対比して覚えると整理しやすいです。
問33:小児の膝痛で確認すべき身体所見
テーマ: 小児の膝痛では、膝だけでなく股関節疾患からの関連痛を疑う必要があります。6歳、明らかな誘因なし、2か月続く膝痛という情報から、Perthes病などの股関節疾患を想起できるかがポイントです。
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正答:a、c、d
- a(正):歩容異常の確認は重要です。Perthes病では跛行が初発症状となり、疼痛が股関節ではなく大腿や膝に現れることがあります。
- b(誤):脛骨粗面の圧痛はOsgood-Schlatter病を疑う所見ですが、同疾患は成長期後半のスポーツ活動が多い小児・思春期に多く、本症例で最優先に確認する所見ではありません。
- c(正):股関節可動域、とくに内旋・外転制限を確認します。小児では股関節病変の痛みが膝に投射されるため、膝痛でも股関節診察を省略してはいけません。
- d(正):大腿周径の左右差は、疼痛による患肢の使用低下と筋萎縮を捉える手掛かりになります。慢性に経過したPerthes病などで確認すべき所見です。
- e(誤):膝前方引き出しテストは前十字靱帯損傷の評価です。外傷歴がなく慢性に経過する6歳児の膝痛では、優先度は低くなります。
小児の膝痛を診たら、まず「歩容」「股関節可動域」「患肢の筋萎縮」を確認する、という流れを押さえておきましょう。
問34:Sprengel変形
テーマ: 問題冊子の写真は先天性肩甲骨高位症、いわゆるSprengel変形を示します。胎生3~5週に頸椎から発生した肩甲骨が、下降せずに肩甲骨が高い位置にとどまってしまう病態です。肩甲骨の下降障害、肩関節可動域制限、頚椎奇形、肩甲椎骨などの合併所見が問われました。
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正答:b(誤っているもの)
- a(正):患側肩甲骨が高位かつ低形成となるため、肩甲上腕リズムが障害され、肩関節外転が制限されます。
- b(誤):Sprengel変形は肩甲帯の先天異常であり、四肢短縮型低身長を特徴とする骨系統疾患ではありません。
- c(正):Klippel-Feil症候群をはじめ、頚椎癒合などの先天性頚椎異常を合併することがあります。
- d(正):肩甲骨上内側縁と頚椎を結ぶ肩甲椎骨(omovertebral bone)は代表的な合併所見です。連結が線維性・軟骨性の場合もあります。
- e(正):外観上の重症度評価にはCavendish分類が用いられ、軽度のGrade Iから高度のGrade IVまでに分類されます。肩甲骨高位があきらかであるⅢ以上の変形や外転100度以下の機能障害例は手術適応と言われています。
問35:大腿骨頭すべり症
テーマ: 13歳男子の股関節痛、正面・Lauenstein像での骨端線異常、MRIでの骨端線周囲の信号変化から、大腿骨頭すべり症(SCFE)を診断する画像問題です。軽度例やpre-slipではMRIが早期診断に役立ちます。
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正答:d
- a(誤):画像所見は骨腫瘍よりも大腿骨頭すべり症に合致しており、骨生検の適応ではありません。
- b(誤):大腿骨頭すべり症は放置するとすべりが進行し、変形、関節軟骨障害、大腿骨頭壊死などにつながる可能性があります。単なる経過観察は不適切です。
- c(誤):関節液貯留を伴うことはありますが、感染性股関節炎を示す症例ではなく、関節穿刺を第一に行う状況ではありません。
- d(正):安定型の軽度〜中等度すべりでは、原位置での骨端固定術(in-situ fixation)が標準的な治療です。目的は、これ以上のすべりを防ぐことです。
- e(誤):診断後に積極的な股関節可動域訓練を行うと、すべりを悪化させるおそれがあります。まず免荷と速やかな専門的治療が必要です。
MRIでは、骨端線の拡大、骨端線周囲の骨髄浮腫、関節液貯留などが早期所見となります。単純X線で変化が乏しくても、症状とMRI所見が合えば見逃さないことが重要です。
問36:骨系統疾患の成人期合併症
テーマ: 小児期から続く骨系統疾患について、成人期に問題となる整形外科的合併症を対応させる問題です。各疾患の変形や脊椎病変、悪性転化を整理しましょう。
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正答:a(誤っている組合せ)
- a(誤):骨形成不全症の主な整形外科的問題は、反復骨折、骨変形、脊柱変形、関節症などです。骨髄炎は成人期の典型的合併症ではありません。
- b(正):軟骨無形成症では、生来の椎弓根間距離の狭小化などを背景に、成人期に腰部脊柱管狭窄症を生じやすくなります。
- c(正):多発性骨端異形成症では、荷重関節の関節面不整から、若年〜成人期に早発性の変形性関節症を生じます。
- d(正):多発性軟骨性外骨腫症では、骨軟骨腫から二次性軟骨肉腫への悪性転化に注意が必要です。骨成熟後の増大や新たな疼痛は警告所見です。
- e(正):先天性脊椎骨端異形成症では、歯突起低形成や環軸椎不安定性により頚髄症を生じることがあります。
問37:続発性骨粗鬆症
テーマ: 続発性骨粗鬆症の原因疾患を問う基本問題です。炎症性疾患、性ホルモン低下、甲状腺・副腎疾患が骨代謝にどう影響するかを整理します。
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正答:e(誤っているもの)
- a(正):関節リウマチでは、慢性炎症、活動性低下、グルココルチコイド使用などが重なり、骨量低下と骨折リスク上昇を来します。
- b(正):Cushing症候群では、慢性的なコルチゾール過剰が骨形成を抑制し、続発性骨粗鬆症の原因となります。
- c(正):性腺機能低下症では、エストロゲンまたはテストステロンの低下により骨吸収が亢進し、骨量が低下します。
- d(正):甲状腺機能亢進症では骨代謝回転が過剰となり、骨量低下を来します。
- e(誤):副甲状腺機能低下症では骨代謝回転が低下し、骨密度はむしろ高値となることが一般的です。骨質や骨折リスクの評価には議論が残りますが、典型的な続発性骨粗鬆症の原因ではありません。
問38:ビタミンD欠乏性くる病
テーマ: ビタミンD欠乏性くる病のリスク、血液検査、鑑別、治療を問う問題です。栄養性くる病とFGF23関連低リン血症性くる病を区別しましょう。
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正答:b、c、e
- a(誤):抗FGF23抗体であるブロスマブは、主にX連鎖性低リン血症などのFGF23関連低リン血症性くる病に用います。通常のビタミンD欠乏性くる病に投与する薬剤ではありません。
- b(正):骨端部での石灰化障害と骨芽細胞活性の上昇を反映し、血清アルカリホスファターゼ(ALP)は高値になります。
- c(正):母乳中のビタミンD量は少ないため、ビタミンD補充を行わない完全母乳栄養は発症リスクになります。母体のビタミンD欠乏や日光曝露不足が重なるとリスクはさらに高まります。
- d(誤):ビタミンD欠乏性くる病と低リン血症性くる病は、いずれも骨幹端の杯状変形、毛羽立ち、骨端線開大などを示し得ます。X線だけでの確実な鑑別は困難で、血清Ca・P・ALP・PTH・25(OH)D、尿中リン排泄、必要に応じてFGF23などを評価します。
- e(正):ビタミンDの貯蔵状態を最もよく反映する血清25-水酸化ビタミンD[25(OH)D]は低値となります。
TIPS:くる病は骨基質の硬さを担うミネラル(70%)の障害、一方で骨形成不全症は骨基質のしなやかさを担う有機質(30%)の障害です。
問39:悪性骨腫瘍のX線所見
テーマ: 骨腫瘍の単純X線評価では、骨破壊パターン、移行帯、骨膜反応、腫瘍基質を確認します。病変の増殖速度を反映する「虫食い状」と「スピクラ」がポイントです。
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正答:b、d
- a(誤):地図状骨破壊は境界が比較的明瞭で移行帯が狭く、一般に緩徐に増大する良性病変でみられます。ただし、低悪性度腫瘍などの例外はあるため、地図状だから必ず良性という意味ではありません。
- b(正):虫食い状骨破壊は大小不同の骨透亮像が融合する像で、移行帯が広く、悪性骨腫瘍など増殖の速い病変を示唆します。
- c(誤):すりガラス様陰影は、線維性骨異形成で代表的にみられる腫瘍基質です。
- d(正):スピクラは骨表面から放射状または垂直に伸びる棘状の骨膜反応で、骨肉腫などの侵襲性の高い骨腫瘍を示唆します。ただし、高度な感染でも侵襲的骨膜反応を生じることがあり、単独で悪性を確定する所見ではありません。
- e(誤):石鹸泡状陰影は、骨巨細胞腫や動脈瘤様骨嚢腫などの膨張性骨病変でみられる表現です。骨巨細胞腫は局所侵襲性を示しますが、典型的には良性腫瘍に分類されます。
問40:Ewing肉腫の初期治療
テーマ: 8歳男児の発熱、下腿痛・腫脹、炎症反応上昇、長管骨の破壊性病変、MRIでの骨髄・軟部組織進展、病理での小円形細胞の増殖から、Ewing肉腫を考える問題です。骨髄炎に似た臨床像をとる点にも注意します。
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正答:a、e
- a(正):荷重骨に大きな骨破壊を認めており、病的骨折を防ぐために患肢を免荷します。これは腫瘍に対する根治治療と並行して行う支持的対応です。
- b(誤):Ewing肉腫では発熱、白血球増加、CRP上昇を来し、急性骨髄炎に似ることがあります。しかし、この症例では生検で悪性腫瘍が示されており、抗菌薬治療を選ぶ段階ではありません。
- c(誤):Ewing肉腫に病巣掻爬術のみを行っても局所制御として不十分です。通常は術前化学療法後に、切除可能性と機能温存を検討したうえで広範切除を行います。
- d(誤):Ewing肉腫は放射線感受性があり、切除不能例や十分な切除縁を確保できない場合などに放射線治療を用います。ただし、全身化学療法に先行して一律に放射線治療を行うわけではなく、この時点で選ぶ初期対応ではありません。
- e(正):Ewing肉腫は診断時に画像で確認できない微小転移を有する可能性があるため、全身化学療法が治療の中心です。一般には多剤併用化学療法を先行し、その後に手術または放射線治療で局所制御を行います。
まとめ:小児整形外科と骨腫瘍は「年齢・部位・時間軸」で整理する
問31〜40では、次のポイントが重要でした。
- 脂肪塞栓症候群は、長管骨骨折後24〜72時間での発症が典型的
- 小児の膝痛では、股関節由来の関連痛を考えて歩容・股関節可動域・大腿筋萎縮を確認する
- 大腿骨頭すべり症では、MRIがpre-slipを捉えることがあり、原位置固定で進行を防ぐ
- ビタミンD欠乏性くる病ではALP高値、25(OH)D低値となり、完全母乳栄養は補充がなければリスクになる
- 悪性骨腫瘍では、虫食い状骨破壊や侵襲的骨膜反応に注目する
- Ewing肉腫は骨髄炎に似るが、生検診断後は全身化学療法と局所制御を組み合わせる
疾患名だけで覚えるより、「何歳に多いか」「どの骨・関節に生じるか」「症状がいつ現れるか」をセットにすると、画像問題や症例問題にも対応しやすくなります。
主な確認資料
- 参考記事:2026年整形外科専門医試験 問1〜10の解説
- AAOS: Management of Acute Compartment Syndrome
- Fat embolism syndrome – BJA Education
- Thromboangiitis obliterans(Buerger病)
- Upper-limb joint replacement後のVTEに関するシステマティックレビュー
- Panner病の文献レビュー
- 足部骨端症のレビュー
- Royal Children’s Hospital Melbourne: Perthes Disease
- Pediatric Orthopaedic Society of North America: Sprengel’s Deformity
- Pediatric Orthopaedic Society of North America: SCFE
- GeneReviews: Achondroplasia
- GeneReviews: Multiple Epiphyseal Dysplasia
- GeneReviews: Hereditary Multiple Osteochondromas
- Hypoparathyroidismの骨所見に関するレビュー
- Global Consensus Recommendations on Nutritional Rickets
- American Academy of Pediatrics: Prevention of Rickets and Vitamin D Deficiency
- Multi-modality imaging approach to bone tumors
- National Cancer Institute: Ewing Sarcoma Treatment
整形外科専門医試験 過去問解説シリーズ
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整形外科専門医試験のおすすめ勉強法
正答は第38回整形外科専門医試験筆答試験問題・正答一覧(2026年1月16日実施、日本整形外科学会会告2026年4月No.9)に照合しています。問題の図・写真は、お手元の問題冊子と併せてご確認ください。

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