【解説あり】2026年(令和8年)整形外科専門医試験 過去問解説(問1〜10)

整形外科専門医試験過去問解説の学習イメージ(脊椎模型・医学書を参照) 専門医試験

はじめに

若手整形外科医の先生方、日々の病棟業務や手術、本当にお疲れ様です。

多忙な業務の中で、試験に向けた復習の時間を確保するのはなかなか骨が折れますよね。しかし、日常の臨床で遭遇する疾患の病態を深く理解し、的確な診断を下すためには、実はこうした基礎医学の土台が役に立つことがあります。

今回は、忙しい先生方がスキマ時間で効率よく知識を整理できるよう(専門医試験の効率的な勉強法はこちら)、2026年の試験問題の解答解説を作りました。解説の後にある(p40)などは標準整形外科学第13版の該当ページになります。

明日からの診療パフォーマンスをさらに引き上げるための「知識の効率化」として、ぜひサクッと挑戦してみてください!それでは、早速いってみましょう。


2026年 整形外科専門医試験 過去問解説

問1:骨の構造と生理

テーマ: これは骨の構造と生理に関する基本問題。骨細胞・骨芽細胞・I型コラーゲン・Volkmann管など、骨組織を構成する基本要素を押さえておきましょう。

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正答:a, d

  • a(正): 骨芽細胞が自ら産生した骨基質のなかの「骨小腔」に閉じ込められ、骨基質産生能を失ったものが 骨細胞(osteocyte)です(p15)。
  • b(誤): 骨芽細胞は骨形成を担い、骨表面に存在します。吸収窩(Howship窩)に存在するのは破骨細胞です(p15)。
  • c(誤): オステオカルシンは、骨芽細胞によって産生される骨形成マーカーですが、オステオカルシン自体は骨強度にネガティブに作用するとされています(p18)。
  • d(正): 骨基質蛋白の約90%はコラーゲンであり、そのほとんどがI型コラーゲンです。
  • e(誤): ハバース管(長軸方向)に対して、垂直方向に走る血管孔をフォルクマン(Volkmann)管と呼びます。

問2:骨の修復

テーマ: これは骨折治癒に関する問題。BMPの分化誘導能、β-TCPの骨伝導能、仮骨形成のメカニズムなど、骨形成材料と治癒過程の理解が問われました。

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正答:a(誤っているものを選ぶ)

  • a(誤): β-TCP(β-リン酸三カルシウム)は、骨が伝わって伸びるための足場となる骨伝導能はありますが、局所に骨を分化誘導させる「骨誘導能」はありません(p43)。頻出問題です。
  • b(正): 骨折部が強固に固定され力学的に安定している(一期癒合など)と、仮骨(callus)形成は少なくなります(p40)。
  • c(正): 二次骨癒合は、骨折部の軽微な動きを許容する固定(ギプスや髄内釘)で見られ、仮骨形成を伴います(p40)。
  • d(正): 骨折治癒は、炎症期 → 修復期 → リモデリング期の3相を通ります(p40-41)。
  • e(正): BMPは、未分化間葉系細胞を軟骨芽細胞や骨芽細胞へ分化誘導する強力な因子です(p23)。

問3:成長軟骨板

テーマ: これは成長軟骨板(骨端線)に関する問題。長軸方向の成長を担う軟骨内骨化のしくみと、PTHrPなどの制御因子を整理しておきましょう。

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正答:b(誤っているものを選ぶ)

  • a(正): 成長軟骨板は、長管骨の長軸方向の成長を司ります(p21)。
  • b(誤): 成長軟骨板による骨形成は軟骨内骨化です(p21)。膜性骨化は、鎖骨や頭蓋骨、あるいは長管骨の太さ(横径)の成長で見られます。
  • c(正): 静止層から増殖層を経て、肥大軟骨細胞層へと分化が進むにつれ、細胞は肥大化します。
  • d(正): 性成熟完了期に軟骨が骨に置換され、骨端線が閉鎖します。
  • e(正): PTHrP(副甲状腺ホルモン関連蛋白)は、軟骨細胞の増殖を促進し分化を抑制する重要な制御因子です(p22)。

問4:関節軟骨

テーマ: これは関節軟骨の組織構造に関する問題。tidemark、コラーゲン分布、プロテオグリカン、輝板(lamina splendens)など、層構造の理解がポイント。

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正答:d(誤っているものを選ぶ)

  • a(正): tidemarkは、非石灰化層(深層)と石灰化層の境界線です(p51)。
  • b(正): 関節軟骨のコラーゲンの大部分(約90%以上)はII型コラーゲンです(p55)。
  • c(正): プロテオグリカン(アグリカン)は、深層に行くほど含有量が増え、水分保持と耐圧性に寄与します(p51)。
  • d(誤): 軟骨細胞のすぐ周囲である「細胞周囲基質(pericellular matrix)」はVI型コラーゲンが豊富です(p55)。
  • e(正): 最表層は輝板(lamina splendens)と呼ばれ、微細なコラーゲン線維が網目状に密に走っています(p51)。

問5:体幹の姿勢保持筋

テーマ: これは姿勢保持筋(抗重力筋)の特徴に関する問題。持続的収縮を担う遅筋(Type I線維)の特徴がカギになります。

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正答:e

  • 姿勢保持を担う抗重力筋は、持続的な収縮が必要なため、疲労しにくい遅筋(Type I線維)が主体です。
  • a〜d(誤): これらはすべて速筋(Type II線維)や白筋の特徴です。
  • e(正): 組織学的には、ミトコンドリアやミオグロビンが豊富なI型線維が多くを占めます。

問6:関節疾患の病態

テーマ: これは変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)の病態を比較する問題。関節液所見、初発部位、コラーゲン産生変化など、それぞれの組織変化の違いを整理しておきましょう。

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正答:a, e(誤っているものを2つ選ぶ)

  • a(誤): 関節軟骨自体には血管・神経がなく、侵害受容器も存在しません。OAの痛みは滑膜炎、骨膜、軟骨下骨、関節包の刺激に由来します。
  • b(正): 関節リウマチ(RA)の関節液中では、炎症反応を反映して好中球が著しく増加します。
  • c(正): RAは、滑膜が付着する「bare area(骨露出部)」から骨侵食が始まります。
  • d(正): OAの初期の組織学的変化は、軟骨表面の細動化(fibrillation)や線維化です。
  • e(誤): 進行したOA軟骨では、軟骨細胞の脱分化により、II型コラーゲンからI型コラーゲンへの産生スイッチが起こります。

問7:膝関節のバイオメカニクス

テーマ: これは膝関節のバイオメカニクスに関する問題。screw-home movement、転がり・すべり運動、内外側半月板の可動性などが問われました。

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正答:d(誤っているものを選ぶ)

  • a(正): 伸展に伴い下腿が外旋する「screw-home movement」が起こります(p640)。
  • b(正): 階段昇降時の膝荷重は体重の約4〜6倍に達します(p640)。
  • c(正): 膝関節の屈伸運動は、単なる蝶番運動ではなく「転がり(rolling)」と「すべり(gliding)」の複合運動です(p640)。
  • d(誤): 膝の屈伸に伴う移動量は、可動性が高い外側半月板の方が内側よりも大きいです(p642)。
  • e(正): 膝関節は骨形状による適合性が低いため、軟部組織(靭帯、半月板)による安定性が重要です(p639)。

問8:C7神経根障害

テーマ: これはC7神経根障害の神経学的所見に関する問題。C7支配の感覚領域と腱反射のポイントを押さえましょう。

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正答:a, e(正しいものを2つ選べ)

  • a(正): C7の感覚支配領域は中指です(C6は母指、C8は小指)。
  • b(誤): 三角筋の筋力低下は主にC5領域です。
  • c(誤): 手関節背屈力(橈側手根伸筋など)の低下はC6領域です。
  • d(誤): 腕橈骨筋腱反射はC6の指標です。
  • e(正): 上腕三頭筋腱反射(TTR)の減弱はC7障害の典型的な所見です。

問9:ROC曲線

テーマ: これはROC曲線の解釈に関する問題。曲線の位置と最適カットオフ値の選び方を理解しているかが問われました。

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正答:a

  • ROC曲線において、曲線が「左上」に膨らんでいるほど、検査の精度(感度と特異度のバランス)が高いことを示します。
  • 図の中で最も左上に位置する曲線(実線)上の点であるが、最も有効な検査における最適なカットオフ値の設定点となります。

問10:正中神経の逆行性伝導速度検査

テーマ: これは正中神経の神経伝導検査(逆行性)に関する問題。刺激電極と記録電極の配置を確認しておきましょう。

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正答:a

  • 逆行性(antidromic)検査では、神経の走行に逆らって、近位(手関節など)を刺激し、遠位(指先)で記録します。
  • 正中神経の感覚枝を評価する場合、手関節で正中神経を刺激し、その支配領域である第2指(人差し指)または第3指に装着したリング電極で導出するのが一般的です。選択肢aがこの配置を示しています。

まとめ:基礎知識は臨床を支える強力な武器になる

お疲れ様でした! 序盤は必ず基礎知識が問われます。その中で今回は、以下のポイントを確認しました。

  • 骨と軟骨の基礎生理: 骨修復におけるBMPの強力な分化誘導能や、関節軟骨の主成分であるⅡ型コラーゲンと変形性関節症進行に伴うⅠ型へのスイッチングなど、病態の根本を構成する知識(骨粗鬆症薬の使い分け解説はこちら
  • バイオメカニクスと解剖: 膝関節における「転がり」と「すべり」の複合運動や、外側半月板の大きな可動性、また姿勢保持筋におけるⅠ型線維(遅筋)の重要性
  • 神経学と統計: C7神経根障害における上腕三頭筋腱反射の減弱といった実践的な神経診察のポイントや、ROC曲線において最も「左上」に位置する点を最適なカットオフ値とする検査精度の考え方

基礎はあまり臨床に直結する知識ではないため、なじみが薄い部分もありますが、何回も復習しているとパターンが見えてきます。これからもインプットとアウトプットを回しながら、ともに勉強の質を高めていきましょう!NotebookLMで文献を効率的に学習する方法も活用すると、さらに定着が深まります。

明日からの診療も応援しています。

この記事を書いた人

整形外科専門医 × AI活用ハッカー。
忙しい整形外科医の日常をAIとライフハックでもっとラクに、もっと面白くするブログを書いています。
温泉、サウナー(ととのう瞬間が至福)/ 野球好き(やるのが100倍好き。ただし大谷翔平は別物)/ 効率化オタク。
温泉が明日の活力。

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