【解説あり】2026年(令和8年)整形外科専門医試験 過去問解説(問11〜20)

専門医試験

【はじめに】

若手整形外科医の先生方、今日もお疲れ様です!

外来に手術、急患対応…と息つく暇もない毎日を送られていることと思います。

専門医試験の対策は「やらなきゃ」と思っていても、教科書を開いた瞬間に睡魔が襲ってきたり、飲み会の誘惑に乗っかったりと思うように進まないと思います。そして、膨大な範囲に途方に暮れたりしてしまいますよね。

前回の「基礎医学・バイオメカニクス編」に続き、今回は2026年専門医試験の問11〜20を解説します。

このセクションでは、筋電図やエコーなどの診断技術から、感染対策、VTEリスク、薬物療法といった、試験だけでなく「明日の当直や手術」ですぐに役立つ実践的な内容が多く含まれています。

「単なる暗記」ではなく、臨床の解像度を上げるための時間として、ぜひスキマ時間でチェックしてみてください。それでは解説に移ります!

問11:針筋電図検査の波形

出典:井樋 栄二・津村 弘(2023)『標準整形外科学第15版』p.162,医学書院.(一部改変)

問 11 針筋電図検査における最小収縮時に認められた運動単位電位の波形を示す. 波形の所見について正しいのはどれか.

a 低振幅

b 多相波

c 完全干渉

d 陽性鋭波

e 持続時間の短縮

正答:b

  • 多相波(polyphasic wave): 提示された波形は、電位が基線を4回以上横切る「多相波」です。
  • 臨床的意義: 正常な運動単位電位(MUAP)は2〜4相ですが、脊髄前角細胞障害や末梢神経障害では、高振幅の多相性の波が出ます。筋原性疾患(myopathy)でも多相化が進みますが、振幅は低いです。
  • 他選択肢: 陽性鋭波(d)は安静時に見られる異常自発電位であり、最小収縮時のMUAPとは異なります。
  • おまけ:通常筋電図では針刺入時、安静時、最小随意運動時、最大随意運動時の4点で計測します。

問12:整形外科領域の超音波診断

問 12 整形外科領域の超音波診断法について誤っているのはどれか.2つ選べ.

a Bモードがよく用いられる.

b 術中に脊髄の変形を観察できる.

c 腱板の腱内部分断裂の診断に有用である.

d 一般に2.5~5 MHzの周波数が用いられる.

e 乳児の発育性股関節形成不全の診断に有用である.

正答:c, d(誤っているものを2つ選ぶ)

  • c(誤): 超音波は腱板の完全断裂や滑液包側・関節側断裂には有用ですが、腱内部分断裂の診断精度はMRIに劣ります。
  • d(誤): 整形外科(運動器)領域では、浅い部位を高精細に見るために7.5〜15MHzの高周波リニアプローブを用います。2.5〜5MHzは腹部など深部臓器用です。
  • e(正): 乳児のDDH(発育性股関節形成不全)診断には、Graf法による超音波検査が標準的です。

問13:大腿骨頭の鑑別診断

問 13 大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折と大腿骨頭壊死症の鑑別に有用な検査はどれか.

a CT

b MRI

c 単純X線

d 骨シンチグラフィー

e ポジトロン断層撮影法(PET)

正答:b

  • MRIの有用性: 大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF)と特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)の早期鑑別にはMRIが最も有用です。
  • 所見の違い: ONFHはT1強調像で「帯状低信号域(band-like signal)」を呈しますが、SIFは初期に広範な骨髄浮腫像を呈することが特徴です。

問14:免疫組織染色の組合せ

問 14 免疫組織染色の組合せで誤っているのはどれか.

a CD31 ———————————- 血管系マーカー

b S-100蛋白 —————————- 神経系マーカー

c desmin(デスミン) —————– 軟骨系マーカー

d vimentin(ビメンチン) ————- 間葉系マーカー

e cytokeratin(サイトケラチン) —– 上皮系マーカー

正答:c(誤っているものを選ぶ)

  • desmin(デスミン): 骨格筋や平滑筋などの筋系マーカーです。軟骨系マーカーではありません。
  • 代表的なマーカー:
    • 血管系:CD31
    • 神経系:S-100蛋白(軟骨細胞でも陽性となる)
    • 間葉系:vimentin
    • 上皮系:cytokeratin

問15:脊椎の感染・病理

問 15 35歳の男性.腰痛と発熱を主訴に来院した.画像検査では椎体の破壊を認め,椎間板への浸潤を伴っていた.病理検査では,1)乾酪壊死を背景に,類上皮細胞とLanghans巨細胞が集簇,2)周囲にリンパ球浸潤を伴う,3)Ziehl-Neelsen(チールニールセン)染色で抗酸菌陽性,であった. 考えられる疾患はどれか.

a 化膿性脊椎炎

b 結核性脊椎炎

c 強直性脊椎炎

d ブルセラ脊椎炎

e サルコイドーシス

正答:b

  • 結核性脊椎炎(Pott病): 「乾酪壊死」「類上皮細胞」「Langhans巨細胞」は結核の典型的病理像です。
  • 決め手: Ziehl-Neelsen(チール・ニールセン)染色で抗酸菌陽性という記述から、結核菌による感染と確定できます。

問16:鎮痛薬の特徴

問 16 鎮痛薬について正しいのはどれか.

a オピオイドは腎機能障害をきたしにくい.

b オピオイドは主に上行性疼痛伝導系に作用する.

c トラマドールは神経障害性疼痛に対する第一選択薬である.

d アセトアミノフェンは中枢よりも末梢で強い抗炎症作用を有する.

e 非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)は線維筋痛症に対する第一選択薬である.

正答:a

  • オピオイドと腎機能: フェンタニルなどのオピオイドは、NSAIDsと異なり腎機能障害をきたしにくいため、高齢者や腎不全患者にも使いやすい薬剤です。
  • 他選択肢:
    • アセトアミノフェン(d)は中枢作用が主で、末梢の抗炎症作用は非常に弱いです。
    • 線維筋痛症(e)の第一選択薬はプレガバリンやデュロキセチンであり、NSAIDsは推奨されません。

問17:血管柄付き骨移植

問 17 血管柄付き骨移植について正しいのはどれか.

a 血管柄付き肋骨は脊椎には移植しない.

b 肩甲骨と広背筋は同じ血管茎で採取できる.

c 血管柄付き腸骨は15 cmの長管骨欠損に移植する.

d 血管柄付き腓骨は腓骨遠位部を3 cm残して採取する.

e 手指欠損の再建には血管柄付き第5足趾移植が行われる.

正答:b

  • 血管茎の共有: 肩甲骨(回旋肩甲動脈系)と広背筋(胸背動脈系)は、ともに肩甲下動脈を共通の元とするため、同一の血管茎で同時に採取(chimeric flap)することが可能です。
  • 他選択肢:
    • 腓骨(d)の採取時は、足関節の安定性を保つために遠位部を5〜7cm残す必要があります。

問18:局所麻酔薬の中毒症状

問 18 局所麻酔薬の過量投与で出現する症状として正しいのはどれか.2つ選べ.

a 過呼吸

b 粘膜浮腫

c 全身痙攣

d 顔面紅潮

e 口周囲のしびれ

正答:c, e(正しいものを2つ選ぶ)

  • 中毒の進行: 局所麻酔薬の血中濃度が上昇すると、まず口周囲のしびれや金属味などの神経症状が現れます(e)。
  • 重症化: さらに濃度が上がると中枢神経が抑制され、全身痙攣や意識消失、心停止に至ります(c)。

問19:手術部位感染(SSI)対策

問 19 待機的手術における手術部位感染対策として正しいのはどれか.2つ選べ.

a 手術の4週間以上前から禁煙させる.

b 手洗いに水道水を用いてもよい.

c NASA基準クラス100の手術室で行う必要がある.

d 術野の消毒薬はアルコールを含有しないものがよい.

e 術後に抗菌薬を3日間以上投与する.

正答:a, b(正しいものを2つ選ぶ)

  • 禁煙(a): 手術の4週間以上前からの禁煙は、SSIのリスクを有意に低下させます。
  • 手洗い(b): 最新のガイドラインでは、水道水と石鹸による手洗い後にアルコール製剤を使用する方法も認められています。
  • 他選択肢: 予防的抗菌薬(e)は術後24時間以内に終了するのが原則です(3日間以上は過剰)。NASA基準クラス100の手術室(c)は1立方フィート(約0.028m³)の空気中に0.5μm以上の微粒子が100個以下という厳格な基準を満たしたものです。

問20:静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク

問 20 周術期静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクファクターはどれか.3つ選べ.

a 高齢

b VTEの既往

c 経口避妊薬

d 硬膜外麻酔

e トラネキサム酸投与

正答:a, b, c(正しいものを3つ選ぶ)

  • 主要な因子: 高齢(a)、VTEの既往(b)、経口避妊薬の服用(c)はいずれも確立されたリスクファクターです。
  • 保護的因子: 脊椎・下肢手術において、硬膜外麻酔(d)は全身麻酔に比べてVTEの発症率を下げるとされています。

【まとめ】

問11〜20の解説、いかがでしたでしょうか? 今回扱った10問には、専門医として備えておくべき重要なエッセンスが詰まっていました。

  • 診断の精度を上げる: MRIによるSIFとONFHの鑑別や、高周波リニアプローブを用いたエコー診断、筋電図の多相波の意味など、「なんとなく」を意味のあることに変える知識。
  • 安全な手術のために: 局所麻酔薬の中毒症状や、最新のSSI対策(4週間前の禁煙、手洗いの基準)、VTEのリスク管理といった、合併症を未然に防ぐための臨床スキル。
  • 治療の幅を広げる: 腎機能を考慮したオピオイドの選択や、難治性欠損に対する血管柄付き骨移植の適応など。

日々の業務に追われていると、こうした知識は「試験のための勉強」に見えがちです。しかし、一度整理して頭に入れておくと、回診や術前カンファレンスでの視点が驚くほど変わるかもしれません。

合格の先にある「より良い診療」を目指して、一歩ずつ進んでいきましょう。 次は問21以降でお会いしましょう!明日からの診療も、どうぞご安全に。

この記事を書いた人

整形外科専門医 × AI活用ハッカー。
忙しい整形外科医の日常をAIとライフハックでもっとラクに、もっと面白くするブログを書いています。
温泉、サウナー(ととのう瞬間が至福)/ 野球好き(やるのが100倍好き。ただし大谷翔平は別物)/ 効率化オタク。
温泉が明日の活力。

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